Web3.0の誕生から社会インフラへの定着まで

サトシ・ナカモトと名乗る人物が「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」を発表し、ブロックチェーン技術の基礎となる概念が示されました。これは、仲介者なしで低コストな取引を目指す分散型暗号資産ビットコインの提案であり、後のWeb3.0の技術的基盤となります。2009年にはビットコインネットワークが稼働を開始しました。

イーサリアムの共同設立者であるギャビン・ウッド氏が「Web3」という用語を創り出しました。これは、大手IT企業へのデータ集中というWeb 2.0の問題に対し、分散化、ブロックチェーン、トークン経済などを活用した次世代インターネットの構想です。ウッド氏はWeb3Foundationを設立し、Polkadotネットワークの開発を進めました。

ヴィタリック・ブテリン氏が、単なる通貨送受信だけでなく、契約の自動実行を可能にする「スマートコントラクト」を備えたプラットフォーム「イーサリアム」を考案しました。これにより、ブロックチェーンの応用範囲が広がり、分散型アプリケーション（dApps）やDAO（分散型自律組織）の構築が可能になりました。

Mt. Gox事件を背景に、日本の資金決済法が改正され、暗号資産に関する規制が導入されました。これにより、暗号資産交換業者は金融庁への登録が義務付けられ、利用者保護とマネーロンダリング対策が強化されました。日本は世界に先駆けて暗号資産の法整備を進めた国の一つとなりました。

NFT（非代替性トークン）が世界的なブームとなり、デジタルアートなどが高額で取引されました。Beeple氏の作品が約75億円で落札されるなど、衝撃的な出来事が相次ぎ、NFTマーケットプレイスOpenSeaも急成長しました。このブームを機に、Web3.0はブロックチェーンやNFT、DeFiなどを支える基盤技術として広く認知されるようになりました。

政府の経済財政運営と改革の基本方針（骨太方針2022）に「Web3.0の推進に向けた環境整備」が明記されました。これは、Web3.0が新たなサービス創出やスタートアップの成長に繋がる国家戦略として位置づけられたことを示します。その後、デジタル庁や経団連も関連活動を活発化させました。

改正資金決済法が施行され、法定通貨を裏付けとするステーブルコインが「電子決済手段」として法的に定義されました。これは、海外発行ステーブルコインの国内流通を制限していた状況を改善し、利用者の安全性を高めるための措置です。発行には厳格な規制が課せられました。

2021年に急騰したNFTアートの注目度が落ち着き、取引ボリュームは大幅に減少しました。投機目的から、実用的な活用が模索され始め、企業はマーケティングツールとしてのNFT活用を試みる動きが台頭しました。NFTは、企業のマーケティングやWeb3.0における情報管理の中核技術としての有用性が再認識されました。

2025年現在、Web3.0は派手な盛り上がりは落ち着きましたが、社会インフラとして静かに定着し始めています。ブロックチェーン技術の高速化やゼロ知識証明などの進展、国内外での法規制整備が進み、Web3.0は「制度設計」の段階に入りました。企業はWeb3.0を戦略的に取り込む準備が求められています。