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新社会人の就職観、時代とともにどう変わった?

2025年11月25日

バブル経済、就職氷河期、働き方改革を経て、現代の若者はどのような就職観を持っているのでしょうか。昭和から令和までの就職観の変遷を、主要な出来事とともにたどります。

📝 総括

新社会人の就職観、時代とともに変遷:「やりたい仕事」から「安定」・「ウェルビーイング」へ

バブル経済期の1989年頃は、経済成長を背景に「やりたい仕事」や「個性を生かせるか」が重視されていました。しかし、1991年のバブル崩壊以降、「就職氷河期」を経て、2007年頃には「安定性」が企業選択の重要な要素となりました。

2018年の働き方改革以降は、「ワークライフバランス」が定着し、2024年頃には従業員の心身の健康や幸福を意味する「ウェルビーイング」への企業の取り組みが意識されるようになっています。

近年の物価高や経済不安を背景に、2025年4月には「安定している会社」が企業選択のポイントで過去最高を更新しました。一方で、「ノルマがきつそうな会社」や「転勤が多い会社」は避けたい企業の特徴として挙げられ、働きがいだけでなく「働きやすさ」も重視されています。2025年8月には内々定率の低下と活動継続率の上昇が見られ、学生が企業選びに慎重になっている様子がうかがえます。さらに、2025年11月には採用充足率が過去最低を記録し、企業が新卒採用に苦戦している状況が示されています。

📜 タイムライン

1
📅 1989年1月

バブル経済下「やりたい仕事」重視

日本経済はバブル景気に突入し、新卒採用市場は「超売り手市場」となりました。学生は複数の企業から内定を得ることも珍しくなく、豊富な選択肢の中から自身の興味や能力を活かせる「やりたい仕事」を追求する就職観が形成されました。1987年の新入社員の会社選択理由では、「自分の能力、個性を生かせるから」が最も高く、次いで「会社の将来性を考えて」が挙げられました。また、「技術が覚えられるから」や「仕事が面白いから」といった、仕事内容や自己実現を重視する傾向が強かった時代です。

2
📅 1991年1月

バブル崩壊、就職氷河期の始まり

1991年のバブル崩壊後、日本経済は長期的な停滞期に入り、新卒採用は大幅に抑制され、「就職氷河期」と呼ばれる厳しい時代が到来しました。企業は人件費削減圧力に直面し、新卒採用意欲が低下。有効求人倍率も低水準で推移しました。この経済的な不安から、その後の学生の就職観に大きな影響を与えることになります。

3
📅 2007年1月

就職氷河期を経て「安定」志向へ

就職氷河期を経験した世代を中心に、企業選択において「安定性」を重視する傾向が強まりました。2007年の調査では、「仕事の内容」に加え、「労働時間・休日・休暇」や「会社の将来性・安定性」を重視する割合が高まりました。特に女性では「仕事と家庭が両立できるか」が重視され、経済的な不安から企業選択において「安定性」が重要な要素として浮上しました。

4
📅 2018年1月

働き方改革で「ワークライフバランス」定着

2018年には「働き方改革関連法案」が施行され、長時間労働の是正や多様な働き方の推進が社会的に注目されました。これを受け、学生の就職観においても、仕事とプライベートの調和、すなわち「ワークライフバランス」を重視する意識がさらに定着しました。企業を選ぶ上で、福利厚生の充実や柔軟な働き方ができるかどうかが、より重要な要素となっていきました。

5
📅 2024年1月

就活で「ウェルビーイング」を意識

2024年卒の学生を対象とした調査では、約7割が就職活動で企業の「ウェルビーイング」(従業員の心身の健康や幸福)への取り組みを意識していることが明らかになりました。「心身共に健康であることが、仕事のパフォーマンスに影響すると思う」という考え方が広がり、企業選びの新たな視点として注目されました。これは、個人の健康と仕事の両立を重視する現代の就職観を反映したものです。

6
📅 2025年4月

「安定」志向が過去最高を更新

マイナビが発表した「2026年卒大学生就職意識調査」によると、企業選択のポイントで「安定している会社」が51.9%と初めて5割を超え、7年連続で最多となりました。近年の物価高や経済的な不安を背景に、学生は経済的な安定を最優先に考える傾向が強まっています。また、「給料が良い会社」への関心も4年連続で増加し、25.2%となっています。

7
📅 2025年4月

避けたい企業の特徴に「ノルマ」「転勤」

行きたくない会社として「ノルマのきつそうな会社」が最多となりました。また、「転勤が多い会社」を避けたいという学生も5年連続で増加し、3割を超えました。これは、ワークライフバランスを重視する現代の就職観を反映した結果と言えます。学生は、働きがいだけでなく、働きやすさも企業選びの重要な基準としています。

📎 出典・参考資料:

8
📅 2025年8月

内々定率低下、活動継続率は上昇

マイナビが発表した「2026年卒 大学生キャリア意向調査8月」によると、8月末の内々定保有率は87.6%で前年より2.2ポイント減少しました。一方で、就職活動の継続率は21.8%で、前年より1.8ポイント増加しており、進路決定に向けて活動を続ける学生が多いことが示されました。これは、学生が企業選びに慎重になっている可能性を示唆しています。

9
📅 2025年11月

採用充足率、過去最低を記録

マイナビの調査で、2026年卒の採用充足率は69.7%となり、現行のスケジュールとなった2017年卒以降で過去最低を記録しました。これは、企業が新卒採用に苦戦している状況を示しています。また、AIによる業務代替について2割の企業が「今後は影響がありそう」と回答しており、将来的な採用への影響も懸念されています。