「異次元の少子化対策」の歩み:2023年からの主な出来事
2023年初頭に表明された「異次元の少子化対策」から、具体的な政策の決定、施行、そしてその影響までを時系列で追います。子育て支援の拡充や新たな制度の導入、そして財源確保の議論など、日本の未来に関わる重要な動きをわかりやすく解説します。
📝 総括
「異次元の少子化対策」の歩み:2023年からの主な出来事 総括
2023年初頭に岸田首相が「異次元の少子化対策」を表明したことを皮切りに、日本は少子化対策を国家的な最重要課題として位置づけ、具体的な政策実行へと舵を切りました。この取り組みは、子ども政策を一元化する「こども家庭庁」の発足(2023年4月)や、出産育児一時金の増額(同月)といった、子育て世代への直接的な支援強化から始まりました。
その後、2023年6月には「こども未来戦略方針」が決定され、児童手当の所得制限撤廃や支給期間延長などが盛り込まれました。年末には、3.6兆円規模の「こども未来戦略」が閣議決定され、財源として医療保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金制度」の創設が示されました。また、保護者の就労状況に関わらず子どもが保育施設を利用できる「こども誰でも通園制度」の試行的事業も2023年度から開始されています。
2024年に入り、改正子ども・子育て支援法が成立(2024年6月)し、支援金制度の法制化が進みました。そして、2024年10月からは児童手当が大幅に拡充され、所得制限撤廃や第3子以降の増額などが実現しました。さらに、2025年4月には育児休業給付の拡充が予定されており、2026年4月には「こども誰でも通園制度」の本格実施と「子ども・子育て支援金制度」の徴収開始が予定されています。これらの一連の動きは、少子化傾向の反転を目指し、子育て支援の抜本的な拡充と財源確保に向けた政府の継続的な取り組みを示しています。
📜 タイムライン
少子化対策の検討を表明
岸田首相が年頭会見で、「異次元の少子化対策」の検討を表明しました。少子化は「待ったなしの課題」とし、2030年代までの少子化傾向を反転させるための「ラストチャンス」と位置づけました。6月の骨太方針までに、将来的なこども予算倍増に向けた方針を示す考えを示しました。これにより、政府内で少子化対策に関する議論が本格化しました。
こども家庭庁が発足
子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」が内閣府の外局として発足しました。従来の省庁にまたがる子ども関連行政を一元化し、「子ども真ん中社会」の実現を目指します。少子化や児童虐待、貧困といった課題に総合的に対応するため、子ども政策に関する企画立案・推進が強化されました。
出産育児一時金が50万円に増額
出産育児一時金が、これまでの42万円から50万円に増額されました。これは、子育て世代の経済的負担を軽減することを目的とした政府の決定によるものです。出産費用の実質的な負担軽減が期待され、出産を控える家庭にとって経済的な安心材料となりました。
「こども未来戦略方針」を決定
政府は「異次元の少子化対策」の具体策を盛り込んだ「こども未来戦略方針」を閣議決定しました。児童手当の所得制限撤廃や支給期間延長、第3子以降への支給額増額などが含まれました。2030年代初頭までにこども家庭庁の予算を倍増する目標も示され、今後の少子化対策の基礎となる方針が示されました。
「こども未来戦略」を閣議決定
政府は、今後3年間を集中取組期間とする「加速化プラン」を含む「こども未来戦略」を閣議決定しました。経済的支援の強化や子育て世帯への支援拡充などを柱とし、総額3.6兆円規模の対策が盛り込まれました。財源として、医療保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金制度」の創設が示されました。この戦略は、少子化傾向を反転させるための具体的な道筋を示したものです。
こども誰でも通園制度の試行的事業開始
保護者の就労状況に関わらず、0~2歳の子どもが保育施設を時間単位で利用できる「こども誰でも通園制度」のモデル事業が、2023年度から31自治体で開始されました。これは、未就園児の孤立した育児の解消や多様な働き方への支援を目的としています。2026年度の本格実施に向けたデータ収集が進められています。
改正子ども・子育て支援法が成立
「子ども・子育て支援金制度」の創設を含む「改正子ども・子育て支援法」が成立しました。「こども未来戦略」で示された加速化プランの財源確保のため、新たな支援金制度の法制化が進められました。これにより、2026年度からの子ども・子育て支援金の徴収開始に向けた法的な枠組みが確立されました。
児童手当が大幅に拡充
2024年10月分から児童手当が大幅に拡充されました。所得制限が撤廃され、支給対象が高校生年代まで延長されました。第3子以降の子どもには月額3万円が支給されるようになり、第1子・第2子も増額されました。支給時期も年6回に増え、多くの家庭の家計を支援する内容となっています。
育児休業給付の拡充が施行予定
2025年4月1日から、育児休業給付が拡充されます。子の出生直後の期間に両親が共に育児休業を取得した場合、給付率が上乗せされ、休業前の手取り額に近い給付金を受け取れるようになります。また、育児時短就業給付も新設され、仕事と育児の両立を支援する制度が強化されます。
子ども・子育て支援金制度の徴収開始予定
少子化対策の財源として、「子ども・子育て支援金制度」が2026年度から段階的に徴収される予定です。医療保険料に上乗せする形で、支援金が拠出されます。これにより、児童手当の拡充など具体的な子育て支援策の財源が確保されますが、国民負担増への懸念も指摘されています。
こども誰でも通園制度が本格実施予定
「こども誰でも通園制度」が2026年度から本格実施される予定です。この制度により、保護者の就労状況に関わらず、0歳6カ月から3歳未満の子どもが保育施設を時間単位で利用できるようになります。子育て家庭の孤立防止や、子どもの社会性育成の機会提供に繋がることが期待されています。