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国会議員の給料(歳費)はどう変わってきた?

2025年11月27日

戦後から現在までの国会議員の歳費(給料)の変遷を、重要な出来事をたどりながらわかりやすく解説します。給料がどのように決められ、国民の声がどう影響してきたのか、その歴史を紐解きます。

📝 総括

国会議員歳費の変遷:国民の声に揺れる給与決定の歴史

戦後、国会議員の歳費制度は月額2万円で始まりました。1958年には国家公務員給与との連動規定が導入され、給与決定の自動化が図られました。しかし、1964年の大幅増額案は国民の強い批判を浴び、延期される事態となりました。この出来事は、歳費決定における国民の理解の重要性を示しました。

その後、歳費は上昇を続け、1999年には月額137万5千円でピークを迎えました。2005年には公務員給与との連動規定が削除され、歳費決定の独立性が高まる一方、国民感情との乖離が意識されるようになりました。2011年の東日本大震災や、2020年のコロナ禍では、復興や危機対応のため歳費削減が行われました。

近年では、2023年の期末手当増額への批判や、2025年11月の歳費5万円増額案が国民から強い反発を受け、いずれも見送りとなるなど、歳費決定は国民の厳しい視線に晒され続けています。

📜 タイムライン

1
📅 1947年

戦後、議員の給料制度が始まる

日本国憲法が施行され、国会議員の給料にあたる「歳費」の制度が始まりました。当初の月額は2万円で、当時の大卒初任給の10倍以上という高額な設定でした。これは、戦後の復興を象徴するとともに、議員が外部からの影響を受けずに独立して職務に専念できるようにするためでした。この制度は、議員の生活を保障し、その職務の独立性を守る上で重要な役割を果たしました。

2
📅 1958年8月1日

給料が公務員給与と連動

国会議員の歳費が、議長は総理大臣、副議長は国務大臣、議員は政務次官の給料に相当する額を受け取るように法律が改正されました。これにより、人事院の勧告に基づいて国家公務員の給料が改定されると、国会議員の歳費も自動的に変わるようになりました。この時点での議員歳費は月額9万円でした。この仕組みは、歳費額を決めるための度重なる法改正の手間を省き、給与引き上げへの批判をかわす狙いもありました。

3
📅 1964年1月1日

大幅増額案、国民の批判で延期

人事院の勧告に基づき、国会議員の歳費を月額18万円から24万円へ大幅に引き上げる案が出されました。しかし、その増額幅の大きさに国民から強い批判の声が上がりました。また、歳費以外の手当の一部が税金のかからない非課税扱いだったことも問題視されました。こうした世論の反発を受け、歳費の引き上げは1年間延期されることになりました。この出来事は、国会議員の給与決定において国民の理解が重要であることを示す契機となりました。

4
📅 1966年3月1日

歳費見直し、答申を提出

1964年の歳費増額延期後も国民の批判が続いていたため、当時の船田中衆議院議長が設置した「議員歳費等に関する調査会」が答申をまとめました。答申では、歳費を月額24万円に引き上げるとともに、各種手当を見直し、一部非課税だったものを課税扱いにする内容でした。歳費自体は増額されましたが、手当の総額が増えたため、議員にとっては実質的に有利な内容でした。しかし、国民の理解を完全に得るには至りませんでした。

5
📅 1999年1月1日

歳費、月額137万5千円でピーク

国会議員の歳費が月額137万5000円となり、この時期にピークを迎えました。2000年代に入ると、経済状況や国民感情の変化、そして「行財政改革」の流れの中で、歳費は若干の減少傾向に転じ、月額137万円から132万円、そして129万円へと落ち着いていくことになります。この時期の歳費のピークは、国民の生活実感との乖離が意識されるきっかけともなりました。

📎 出典・参考資料:

6
📅 2005年1月1日

公務員給与との連動規定を削除

国会議員の歳費が国家公務員の給与改定に自動的に連動する規定が、法律から削除されました。これにより、国会議員の歳費決定の独立性が高まる、あるいは国民の理解を得やすい形を目指す意図があったと考えられます。ただし、この削除後も、人事院勧告は国会議員の歳費を見直す際の重要な参考情報として活用され続けています。歳費改定の度に、その妥当性がより一層問われるようになりました。

📎 出典・参考資料:

7
📅 2010年12月1日

現在の歳費水準(129万4千円)に

国会議員の歳費が月額129万4000円となり、現在の水準に達しました。過去の歳費削減や見直しを経て、この金額で落ち着くこととなりました。この水準は、その後の歳費議論の基準となり、2025年11月時点でもこの金額が基準となっています。この決定以降、大きな法改正がない限り、この歳費額が維持されることになりました。

📎 出典・参考資料:

8
📅 2011年4月1日

震災復興のため歳費を削減

東日本大震災からの復旧・復興を支援するため、「歳費月額減額特例法」に基づき、国会議員の歳費が一律月額50万円削減されました。これにより、月額は79万4000円となりました。この措置は半年間続き、総額約21億円の削減となりました。これは、未曽有の災害に対し、国会議員が率先して「身を切る改革」を示すことで、復興への国民の連帯感を高めるための政治的な判断でした。

📎 出典・参考資料:

9
📅 2012年5月1日

財政・震災対応で歳費削減

厳しい財政状況と東日本大震災への対応のため、国会議員の歳費が12.88%削減される(別情報源では20%削減との記述あり)という臨時的な特例措置が取られました。これにより、月額歳費は103万5200円となりました。この削減は一時的なもので、2014年には元の水準に戻されました。この出来事は、国会議員の歳費が国家的な危機や財政状況に応じて変動しうることを示しました。

📎 出典・参考資料:

10
📅 2020年5月1日

コロナ対策で歳費20%削減

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、国会議員の歳費が20%削減される法改正が行われました。この措置は2020年5月1日から2021年4月30日までの1年間適用されました。これは、国民全体が経済的な負担を強いられる状況において、「国会議員も国民と共に痛みを分かち合う」という世論の声に応えるための措置でした。この削減により、感染症対策への財源確保と国民の不満緩和が図られました。

11
📅 2023年1月1日

ボーナス増額に批判、自主返納へ

国会議員の期末手当(ボーナス)が増額される給与法改正が行われましたが、物価高が続く中で国民生活が厳しい状況にあったため、世論から強い批判が起こりました。これを受け、内閣総理大臣や閣僚は、増額された分の給与を自主的に返納することを決定しました。この出来事は、国会議員の報酬が国民感情に非常に敏感であることを改めて示しました。

12
📅 2025年11月20日

歳費5万円増額案、国民から批判殺到

国会議員の月額歳費を現在の129万4000円から5万円引き上げ、134万4000円とする歳費法改正案が浮上したと報じられました。しかし、物価高が続く中で国民の実質賃金が伸び悩む現状に対し、SNS上では「国民の生活を見ていない」「身を肥やす改革だ」といった強い批判が殺到しました。特に「身を切る改革」を掲げる日本維新の会が反対を表明し、国民の厳しい視線が改めて浮き彫りになりました。

13
📅 2025年11月22日

歳費増額案、当面見送りに

国民からの強い批判を受け、国会議員の歳費月額5万円引き上げ案は、当面見送られることになりました。与野党は、次の国政選挙まで歳費を据え置いた上で、その後、民間の賃上げなどを踏まえて増額を検討する方向で調整に入りました。日本維新の会の反対や、高市総理大臣、閣僚による給与削減決定なども影響し、増額の実施時期が先送りされる形となりました。国民の批判を考慮した結果と言えます。