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リニア中央新幹線計画:研究開始から開業遅延までの歩み

2025年11月28日

リニア中央新幹線計画は、1960年代の超高速鉄道の研究から始まり、多くの技術開発や計画変更を経てきました。本タイムラインでは、計画の決定から度重なる開業延期、そして工事費の増額に至るまでの主要な出来事を追います。

📝 総括

リニア中央新幹線計画は、1962年の超高速鉄道研究から始まり、1973年に中央新幹線の基本計画が決定されました。技術開発は山梨リニア実験線建設(1990年)を経て進み、2007年にはJR東海が自己負担での建設を表明し、2025年開業目標が示されました。

その後、開業目標は2027年(2010年)、そして2027年以降(2023年)と変更され、2024年には「早くても2034年以降」と大幅な遅延が確定しました。これは、静岡工区での南アルプストンネル工事の着工遅延が主な要因です。

工事費も当初の5.52兆円から7.04兆円(2021年)、さらに約4兆円増の11.0兆円(2025年)へと膨張しています。2025年には水資源に関する対話が完了したとの発表もありましたが、開業時期の具体的な見通しは立っていません。

📜 タイムライン

1
📅 1962年1月1日

超高速鉄道の研究開始

東京と大阪を1時間で結ぶことを目指し、新幹線の次の世代となるリニアモーター推進浮上式鉄道の研究が始まりました。これは、東海道新幹線の成功を受けて、さらなる高速化を目指す国の鉄道技術開発の一環でした。この研究は、現在のリニア中央新幹線計画の基礎となる技術開発の第一歩となりました。

2
📅 1973年8月1日

中央新幹線の基本計画決定

東京都を起点、大阪市を終点とする中央新幹線の基本計画が正式に決定されました。甲府市、名古屋市、奈良市などを主な経過地とすることが定められ、全国新幹線鉄道整備法に基づき、主要都市を結ぶ高速鉄道網整備の一環として位置づけられました。この決定により、リニア中央新幹線は国家的なプロジェクトとしての性格を強めました。

3
📅 1990年11月1日

山梨リニア実験線建設着手

超電導リニアの実用化に向けた技術検証を行うため、山梨県都留市付近で山梨リニア実験線の建設が始まりました。当初計画より短縮された18.4kmの区間ですが、この実験線での試験走行を通じて、リニア技術の確立と安全性・信頼性の向上に大きく貢献しました。この実験は、後の実用路線建設の基盤となりました。

4
📅 2007年12月1日

JR東海、自己負担での建設を表明

JR東海は、超電導リニア方式を採用し、自己資金で中央新幹線を建設する方針を表明しました。これは、整備新幹線の優先順位で建設が進むのを待つのではなく、事業を前進させるための決断でした。この時、品川~名古屋間の開業目標を「2025年」と初めて示しました。この表明により、プロジェクトはJR東海主導で具体的に動き出しました。

5
📅 2010年1月1日

開業目標を2027年に変更

JR東海は、品川~名古屋間の開業目標を当初の2025年から2027年に変更しました。この変更は、2008年のリーマン・ショックによる東海道新幹線の収入減の影響を受けての方針転換でした。これは、開業時期に関する最初の変更であり、プロジェクトのスケジュールに影響を与える出来事となりました。

📎 出典・参考資料:

6
📅 2011年5月26日

整備計画決定、JR東海に建設指示

国土交通大臣は、交通政策審議会の答申に基づき、リニア中央新幹線の整備計画を正式に決定し、JR東海に建設を指示しました。営業・建設主体としてJR東海が指名され、走行方式は超電導磁気浮上方式、最高設計速度は505km/hと定められました。これにより、リニア中央新幹線は建設段階へと移行するための法的・行政的な基盤が整いました。

7
📅 2014年10月17日

品川~名古屋間の工事実施計画認可

国土交通大臣は、JR東海が申請した品川~名古屋間の工事実施計画(その1)を認可しました。これは、環境影響評価の手続きが完了し、具体的な工事着手が可能となったことを受けての決定です。この認可により、東京都内では2015年春から既存建物撤去や非常口掘削工事に着手する予定となり、本格的な建設工事が可能となりました。

8
📅 2014年12月17日

品川~名古屋間の起工式実施

品川駅と名古屋駅を結ぶリニア中央新幹線の建設工事が、起工式をもって本格的に開始されました。これは、国土交通大臣による工事実施計画の認可を受けた後、具体的な工事着手が可能となったことを受けて行われました。この起工式は、長年の構想が具現化へと進むプロジェクトの象徴的なスタートとなりました。

📎 出典・参考資料:

9
📅 2016年7月11日

大阪延伸の前倒し発表

政府は、財政投融資を最大限活用し、リニア中央新幹線の全線開業を最大8年間前倒しすると発表しました。当初、名古屋~大阪間の開業予定は2045年でしたが、この発表により最速で2037年開業を目指すことになりました。これは、東京・大阪間をハブとして地方創生に繋げる狙いがあり、名古屋以西の区間の開業加速が期待されました。

10
📅 2021年4月1日

工事費、7兆円超に増額

JR東海は、品川~名古屋間の総工事費が当初の5.52兆円から7.04兆円に増加する見込みであると公表しました。難工事への対応、地震対策の追加、発生土の活用先確保などが理由とされました。この大幅な増額は、プロジェクトの財政的な負担が増大することを示しており、今後の事業推進における懸念材料となりました。

📎 出典・参考資料:

11
📅 2023年12月14日

開業時期を「2027年以降」に変更

JR東海は、品川~名古屋間の開業時期を当初予定の「2027年」から「2027年以降」に変更する申請を行い、国土交通省に認可されました。これは、静岡県内での南アルプストンネル掘削工事に着工できない状況が続いていたためです。JR東海は早期開業を目指すとしていましたが、開業時期の不確実性が増す結果となりました。

📎 出典・参考資料:

12
📅 2024年3月29日

開業時期「早くても2034年以降」に

JR東海は、品川~名古屋間の2027年開業を断念し、開業時期を「早くても2034年以降」に変更すると表明しました。静岡工区の着工見通しが立たないことが主な理由です。最も時間を要する南アルプストンネルの工期を考慮すると、仮に今すぐ着工できたとしても、完成は2034年頃になると説明されました。これにより、開業の大幅な遅延が確定しました。

13
📅 2025年6月2日

静岡県、水資源対話完了を発表

静岡県の専門部会で、南アルプストンネル静岡工区における水資源に関する対話項目がすべて完了したと発表されました。長年課題となっていた大井川の水資源問題について、28項目のうち6項目全てで対話が完了したとされました。しかし、一部の市民団体からは、問題の全てをカバーできていないとして「対話完了」に疑問の声も上がりました。

📎 出典・参考資料:

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📅 2025年10月28日

総工事費11兆円、開業時期は「仮置き」

JR東海は、品川~名古屋間の総工事費が従来の7.04兆円から約4兆円増え、11.0兆円になる見通しだと発表しました。物価高騰や難工事への対応が主な要因です。この11.0兆円という数字は、2035年に開業することを「仮置き」として試算されたもので、実際の開業時期の見通しは立っていないと説明されました。総費用は当初の約2倍に膨らみました。

📎 出典・参考資料:

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📅 2025年11月26日

リニア設備点検ロボットを公開

JR東海は、超電導リニア設備の外観検査を行うロボットの試作機「Minervα」(ミネルヴァ)を公開しました。これは、将来のリニア中央新幹線開業後の点検・保全業務の効率化と作業員負担の軽減を目指したものです。このロボットは2026年2月から山梨リニア実験線で検証が開始される予定です。これは将来の運営を見据えた技術開発の一例です。