Ano News

日本における同性婚の法制化を巡る裁判の歩み

2025年11月28日

1994年の東京での初のプライドパレードから、2025年の東京高裁判決まで、日本における同性婚の法制化を巡る重要な出来事を時系列でまとめました。社会運動、地方自治体の取り組み、そして司法の判断がどのように進展してきたかをご覧いただけます。

📝 総括

日本における同性婚法制化を巡る裁判の歩み:総括

日本における同性婚の法制化を巡る動きは、1994年の初のプライドパレード開催から始まりました。その後、2003年には同性愛者の人権を明記した条例が施行され、2015年には渋谷区・世田谷区でパートナーシップ制度が導入され、全国に広がりました。しかし、政府は同性婚を「想定外」とする見解を示していました。

2019年には、同性婚ができないのは憲法違反だと訴える「結婚の自由をすべての人に」訴訟が全国で提訴され、法廷闘争が本格化しました。これに対し、2021年には札幌地裁が同性婚を認めない規定を「違憲」と判断しましたが、大阪地裁は「合憲」と判断するなど、各地で判断が分かれました。

その後、東京地裁、名古屋地裁、福岡地裁も「違憲状態」または「違憲」と判断し、高裁でも札幌、東京、福岡、大阪で「違憲」判決が相次ぎました。しかし、東京二次訴訟の控訴審では「合憲」との判断も示され、全国の高等裁判所での判断が出そろいました。これらの裁判は、最高裁判所による統一的な判断の必要性を高めています。

📜 タイムライン

1
📅 1994年1月1日

初のプライドパレード開催

日本で初めてのプライドパレードが東京で開催されました。これは、世界的なLGBTQ+の権利運動の高まりを受け、日本国内でも性的マイノリティの存在を社会に示し、理解を求める活動が始まったことを象徴する出来事です。このパレードは、社会におけるLGBTQ+への認識が徐々に変化していくきっかけとなりました。

2
📅 2003年1月1日

同性愛者の人権を明記した条例施行

日本国内で初めて、同性愛者の人権を明確に保障する条例が施行されました。これは、性的マイノリティに対する社会的な認識の変化と、権利保障を求める声の高まりを背景としたもので、地方自治体レベルで性的マイノリティへの配慮が進む先駆けとなりました。この条例は、後の法的な権利保障に向けた動きの重要な一歩となりました。

3
📅 2015年4月1日

渋谷・世田谷区でパートナーシップ制度導入

東京都渋谷区と世田谷区が、同性カップルを公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。これは、同性カップルが直面する法的・社会的な不利益を解消するため、地方自治体レベルで始まった取り組みです。法律上の婚姻とは異なりますが、自治体サービスで家族として扱われる道を開きました。この制度は全国に広がり、日本の人口の約92%をカバーする500以上の自治体で導入されることになりました。

4
📅 2015年2月18日

政府、同性婚は想定外と答弁

当時の安倍首相は、参議院本会議で、憲法24条1項にある「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」という条文を根拠に、同性婚の成立は「想定されていない」との政府見解を示しました。政府は、同性婚の法制化は「慎重な検討を要する問題」とし、現行法で整備しないことは「不作為ではない」と回答しました。この答弁は、法制化への道のりが容易ではないことを示しました。

5
📅 2019年2月14日

「結婚の自由」訴訟が全国で提訴

複数の同性カップルが、同性同士の結婚ができないのは憲法違反だと訴え、国に損害賠償を求める「結婚の自由をすべての人に」訴訟を、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5つの地方裁判所で一斉に提訴しました。この訴訟は、同性婚の合憲性を正面から問う日本初の集団訴訟であり、同性婚を巡る法廷闘争が本格的に始まりました。

6
📅 2019年6月1日

野党、同性婚法案を提出

野党三党は、同性婚を法制化するための民法改正案を衆議院に提出しました。これは、国政政党として初めて同性婚の法制化を目指すものでした。この法案は、国会での審議には至りませんでしたが、同性婚の必要性を政治的なアジェンダとして提示する重要な一歩となりました。

7
📅 2021年3月25日

札幌地裁、同性婚は「違憲」

「結婚の自由をすべての人に」訴訟で、札幌地方裁判所は、同性婚を認めない民法と戸籍法の規定が憲法14条1項(法の下の平等)に違反すると判断しました。これは、同性婚を認めない現行制度を憲法違反とした全国初の司法判断です。賠償請求は棄却されましたが、この判決は、国の立法不作為に対して司法が警鐘を鳴らした画期的なものとして、その後の訴訟に大きな影響を与えました。

8
📅 2021年3月26日

東京二次訴訟が追加提訴

札幌地裁の判決を受けて、トランスジェンダーやパンセクシュアルの原告を含む8人の性的マイノリティ当事者が、東京地裁に二次訴訟を提訴しました。この訴訟は、性的マイノリティの多様な当事者がこの問題に直面していることを示し、司法の場でより広範な憲法判断を求める動きでした。原告らは、同性婚を認めない現行法が憲法に違反すると主張し、国に損害賠償を求めました。

9
📅 2022年6月20日

大阪地裁、同性婚は「合憲」と判断

「結婚の自由をすべての人に」訴訟において、大阪地方裁判所は、同性婚を認めない現行制度は憲法に違反しないとする「合憲」判断を下しました。これは、他の地裁で「違憲」または「違憲状態」の判断が出る中で、唯一「合憲」と判断されたものです。裁判所は、婚姻の目的を「自然生殖」にあるとし、同性間の婚姻を認めない規定は憲法に違反しないとしましたが、将来的な立法不作為の可能性には言及しました。

10
📅 2022年11月1日

東京地裁(一次訴訟)「違憲状態」

「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟で、東京地方裁判所は、同性婚を認めない現行法は憲法24条2項に違反する「違憲状態」であるとの判断を示しました。賠償請求は棄却されましたが、個人の尊厳に立脚した婚姻制度を求める憲法24条2項に照らし、同性カップルが婚姻に相当する法的保護を受けられない状況を問題視しました。この判決は、司法が積み重ねてきた「違憲」または「違憲状態」という判断の流れを強めるものとなりました。

11
📅 2023年5月30日

名古屋地裁、憲法24条2項違反で「違憲」

「結婚の自由をすべての人に」訴訟で、名古屋地方裁判所は、同性婚を認めない現行制度が憲法14条(法の下の平等)および24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に違反するとの判決を下しました。特に、24条2項違反を明確に指摘した初の判決となり、婚姻の意義は生殖のみに限定されないと述べ、同性カップルが婚姻による法的利益を享受できないことは差別であると判断しました。これにより、憲法24条2項からのアプローチで現行法の違憲性を認める動きが強まりました。

12
📅 2023年6月8日

福岡地裁、「違憲状態」判決

「結婚の自由をすべての人に」訴訟で、福岡地方裁判所は、同性婚を認めない現行制度は「違憲状態」であるとの判決を下しました。賠償請求は棄却されましたが、同性カップルが婚姻と同様の法的利益を受けられない現状を問題視しました。全国の地裁判決が出そろい、5件中4件が「違憲」または「違憲状態」、1件が「合憲」と判断が割れる結果となりました。この判断の不統一は、最高裁での統一判断の必要性を一層強調することとなりました。

📎 出典・参考資料:

13
📅 2023年10月25日

最高裁、GID特例法の「生殖不能要件」を違憲と判断

最高裁判所は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(GID特例法)が定める「生殖不能要件」を憲法違反で無効とする判断を示しました。これは、身体への不可逆的な手術を強制する要件が個人の尊厳を不当に制約するとしたもので、性的マイノリティの自己決定権を尊重する姿勢を示しました。この判断は、同性婚訴訟における憲法判断にも影響を与える可能性があり、司法の積極的な姿勢を示すものとして注目されました。

📎 出典・参考資料:

14
📅 2024年3月14日

札幌高裁、同性婚は「違憲」と判断

「結婚の自由をすべての人に」訴訟の控訴審で、札幌高等裁判所は、同性婚を認めない民法と戸籍法の規定が憲法24条1項、2項、14条に違反するとの「違憲」判決を下しました。これは高裁レベルで初の「違憲」判断であり、地裁判決を支持する形となりました。裁判長は、同性間の結婚を認めない現行法が、婚姻の自由、個人の尊厳、法の下の平等に反すると判断しました。この判決は、各地で進行中の同性婚訴訟の控訴審に大きな影響を与えました。

15
📅 2024年10月30日

東京高裁(一次訴訟)「違憲」判決

「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟の控訴審で、東京高等裁判所は、婚姻に相当する配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定を設けていないことは憲法14条1項および24条2項に違反するとの「違憲」判断を示しました。賠償請求は棄却されましたが、同性カップルが法的保護を受けられない現状を憲法違反と明確に指摘しました。この判決は、高裁での「違憲」判断の流れを強化し、最高裁での統一判断に向けた重要なステップとなりました。

16
📅 2024年12月13日

福岡高裁、「違憲」判決

「結婚の自由をすべての人に」訴訟の控訴審で、福岡高等裁判所は、婚姻制度の対象から同性カップルが除外されている現在の法律は幸福追求権を保障する憲法13条に反するとの「違憲」判決を下しました。賠償請求は棄却されましたが、同性カップルが婚姻によって得られる法的利益を享受できないことは、個人の幸福追求権を侵害すると判断しました。この判決により、高裁での「違憲」判断がさらに積み重なり、最高裁での統一判断への期待が高まりました。

17
📅 2025年3月25日

大阪高裁、「違憲」判決

「結婚の自由をすべての人に」訴訟の控訴審で、大阪高等裁判所は、同性婚を認めない現行制度は憲法に違反するとの「違憲」判断を下しました。地裁で唯一「合憲」と判断された大阪訴訟の控訴審で、高裁は「違憲」と判断し、他の高裁の判断と足並みを揃えました。賠償請求は棄却されましたが、婚姻の平等が憲法上保障されるべきであるとの判断が示されました。これにより、全国5つの高等裁判所で憲法違反の判断が下され、最高裁での統一判断がより現実味を帯びました。

18
📅 2025年11月20日

東京二次訴訟控訴審結審

「結婚の自由をすべての人に」東京二次訴訟の控訴審が東京高裁で結審し、判決期日が2025年11月28日に指定されました。これは、全国6件の同性婚訴訟のうち、最後の高裁判決となることが決定した重要な局面です。原告らは、婚姻の平等は誰の幸せも奪うものではなく、異性婚と同じ平等な法的保護を求めていると意見陳述しました。この判決は、最高裁での統一判断に向けた最後の高裁判断となるため、大きな注目を集めました。

19
📅 2025年11月28日

東京高裁(二次訴訟)「合憲」判決

「結婚の自由をすべての人に」東京二次訴訟の控訴審で、東京高等裁判所は、同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法に違反しないとする「合憲」判断を下しました。これは、全国6件の同性婚訴訟の二審判決が出そろった中で、高裁レベルでは初の「合憲」判断となりました。裁判長は、憲法24条1項が異性間の婚姻を想定していることなどを理由に、現行規定による区別は憲法14条1項に違反しないと判断しました。原告側は強く反発し、上告する方針を表明しており、今後は最高裁判所が統一的な判断を示す見通しです。